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新米訪問看護師が日々勉強したことを書き残していくブログ

【11軒目】たった1時間の訪問で、何ができる?去年の私のもやもやに今年の私が出した答え

 

こんにちは、ふくです🌿

少し投稿が空いてしまいました。年度末に向けてケアプランの更新月の利用者さんが多い、そんな時期。皆さんの利用者さんも、だいたい短期目標の評価日は11月末か12月末ではないでしょうか?頑張りましょうね…!(今月ケアプラン更新が5人いて瀕死のふくです笑)

 

さて、今日の投稿ですが、タイトルにもあるように訪問看護師なりたての去年、私は「訪問看護ってこんな感じでいいのかな…」と毎日のようにもやもやしていました。

 

憧れだった訪問看護師になれたはいいものの、訪問看護はだいたい、1件あたり30分もしくは60分訪問。30分なんて、ご挨拶して、洗面台をお借りして手洗いして、バイタルサインを測ったらもうあと数十分しか残っていません💦

 

訪問看護師としては新米でも、こんな私でも看護師歴は8年ほどありました。だからこそ気になることはいっぱい。

「あの床に落ちてるお薬っていつのやつ?」

「便出たっていうけど、本当に出てるの?」

「あ〜お話好きなのはいいんだけど、肝心なことが何一つ聞けない〜!」

 

「たった1時間の訪問で、私に何ができているんだろう?」

 

訪問看護は看護技術も病院ほどは実施しません。

腫瘍内科にいた時は毎日していた点滴も具合が悪い時だけだし、

泌尿器科にいた時は毎日誰かの留置カテーテルを入れ替えていたのにそれも14日おき、

採血なんて緊急時以外やりません。

唯一あるのは褥瘡の処置や入浴介助。とはいっても、入浴も希望がなければ介助することもありません。

わかりやすい技術やケアを実施したこと=看護をしている、ということではないとわかっていても、なんとなく自分の訪問に自信が持てずにいました。

 

そんなもやもやを抱えながらも毎日、何が正解なんだろう?どんな関わりをしたらいいんだろう?先輩の訪問の記録を見たり、相談したり、そんなことを繰り返しながら訪問看護を初めてもうすぐ丸2年になります。

 

結論、たった1時間の訪問でできることなんて、大してない

 

こう書くとすごく投げやりに聞こえると思いますが、本当にそうなんです。でもこれはネガティブな意味ではありません。

 

私がこう感じたのは、とある利用者さんとの関わりがあったからです。

 

※個人情報保護の観点から、エピソードや事例の中に出てくる利用者さんの名前、年齢、病名、家族背景、社会背景はすべて個人が特定されないよう、内容を変えて記載しています。私が感じたこと、看護として大切にしたいことを書きたいと思います。

 

その方は独居の90歳代の女性。幸い市内に息子さんが住んでおり、受診や買い物など困りごとにはお嫁さんと一緒に協力してくださる優しい息子さんでした。

これまで大きな病気もなくかなりお元気だった女性は、昨年の冬に転倒し大腿骨頸部骨折となってしまいました。この病名を聞いた医療従事者は「ああ、90歳台なら寝たきりだろうな…」と思うでしょう。それが持ち前の根性でリハビリに勤しみ、不死鳥のごとく蘇って、またご自身のマンションに退院できたのです!(本当にすごい…!

 

息子さんもお嫁さんもとても一生懸命で、今回の退院を機に「同居しようか」と言ってくれていましたが「息子夫婦に迷惑をかけたくない」と訪問看護やヘルパーを導入して独居を継続することにしたのです。

 

 

これまでほとんど入院などの経験をしたことがなく、何でも自分でやってきた彼女にとっては訪問看護師さんに何を依頼したらよいのか?が全くイメージが湧いていませんでした。訪問しても「あらあら、先生いらっしゃい。特にやることないのよ、座ってて」が口癖で、バイタルサインを測定した後は特に介入できることがなく…なんせ内服管理もご自身でカレンダーにセットされているので確認だけでよく、リハビリも病院から持ち帰ったメニューをしっかり毎日こなしていたからです。

 

こんなにセルフケア能力の高い彼女に、私は何をしてあげられるだろうか?

 

そんなふうに悩みながらも毎週訪問しているうちに彼女の体の悩みを聞いたり「毎週誰か来ると思ったら寂しくないわね」と雑談に付き合ったり…訪問看護を導入して3ヶ月ほど経った頃、初めて夜間の緊急携帯に彼女から電話があったのです。

 

電話待機だった先輩看護師から「ものすごく左足が痛くて腫れている。熱もあるが夜中だし病院に行ってもできることはないと思うが、どうしたらいいか。朝になったらどこを受診したらいいか」と相談してくれたようでした。

結果朝までクーリングや痛み止めで耐え忍んでくれて、翌日先輩看護師が勧めた整形外科に行ったら蜂窩織炎になっており、かなり炎症が高かったそうで、即抗生剤の治療を開始したとのことでした。

 

その時に先輩看護師から

「ふくが毎週訪問した時に熱が出たり、痛みがあったり、一人で対応に困ったら我慢しないで夜間電話待機の看護師に相談していい、って指導したそうだね。なんでもかんでも電話していい、っていうんじゃなくて”どんな時に連絡する”を明確に伝えたからこそ、いいタイミングで電話をくれたと思うよ。」と言ってくれたんですよね。

 

先輩のこの言葉でハッとしたことがありました。

訪問看護の大事なのはここか、と私の中で少し腑に落ちたんです。

訪問した時に処置をしたり、ケアをしたりするだけでなく利用者さんが持つセルフケア能力を高めることや、どんな時にSOSを出すか伝える、これってすごく在宅で大切なことだな〜と感じたんです。

 

結局私達訪問看護師が訪問できるのって週に数回、それも数時間なんですよね。

ほとんどは看護師がいない時間を一人、または家族とともに過ごさなくてはならない。病院と違って医療者が側にいられないからこそ、その人のできることを伸ばしたり、本当に危険な場合、看護師を呼ばなくてはならない場合について知っておいてもらう事がすごく大切、それがたった数時間の訪問で私にできる唯一のことなのかもしれないなと去年の自分のモヤモヤに答えを出せたような気がしました。

 

在宅看護を初めてようやく丸2年。在宅看護はやっぱり奥深くてまだまだ新米な私ですが、これからもその短い時間の中で少しでも利用者さんにとってよい関わりができたらいいなあと思います🌿