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新米訪問看護師が日々勉強したことを書き残していくブログ

【6軒目】病院での正解が、在宅での正解とは限らない

 

こんにちは、管理人のふくです🌿

 

今日は、在宅での看護展開について私がとても考えさせられたエピソードについて書いていきます。

 

※個人情報保護の観点から、エピソードや事例の中に出てくる利用者さんの名前、年齢、病名、家族背景、社会背景はすべて個人が特定されないよう、内容を変えて記載しています。私が感じたこと、看護として大切にしたいことを書きたいと思います。

 

その方は80歳台後半の男性でした。これまで大きな病気はありませんでしたが、コロナウイルスに感染してしまい肺炎を併発して入院。高熱や咳の増悪でまともに食事が摂れずに点滴加療していましたが、入院中にあっという間にADLも認知機能も低下してしまい、ほとんど寝たきりになってしまいました。

 

主介護者は配偶者の奥様でしたが奥様も同い年の超高齢者。自身の親御さんは脳出血や大動脈瘤の破裂などであっという間に亡くなった背景があり、介護の知識も経験も全くない奥様が、ある日突如として、要介護4になってしまったご主人の介護を一手に引き受けることとなってしまいました。

 

ほぼ寝たきりになったご主人に初めてのおむつ交換、パットのチェック、嚥下状態も悪くなったのでゼリー食やミキサー食を食べさせ…

介護保険をフルに活用してヘルパーサービスは毎日、訪問看護を週に2回、訪問リハビリを週に1回、デイサービスを週に1回とありとあらゆるサービスを利用しても、奥様の介護負担は明らかでした。施設に入れようにも、どこも空きがなく部屋の空き待ちをしなくてはなりません。

日に日に疲れが見えてきた奥様を皆が心配していたうちに、最悪のタイミングで褥瘡ができてしまったのです。

 

私達も予想はしていました。慣れない介護でオムツ交換時もオムツを引っ張ったり、排泄後はゴシゴシとおしりふきで拭いてしまう奥様。看護師や介護士で日々のケア方法を伝えても奥様も高齢なのでなかなか定着していきません。また、奥様のストレスを考えるとあまり何度も「もっとこうして…」とも言えません。ここに褥瘡となれば、排泄介助の度に軟膏を塗布して、定期的な体位交換をして…この褥瘡を完治まで持っていけるだろうか?私は受け持ち看護師として頭を抱えました。

 

そんな時先輩看護師さんに

「それならいっそ、自動体交付きマットレスに変更したら?」と提案されたのです。

「奥さんの負担を考えたらあれもこれもやっては難しいと思う。だから自動体交マットレスに交換していっそ体交しなくてもいいや!って割り切っちゃおうよ。奥さんは最低限除圧してもらうだけでいい。ただ、排泄介助の時にワセリンだけは塗ってもらおう。奥さんにやってもらうケアを最小限にするんだよ。」と。私は目から鱗でした。

 

病院だったら褥瘡のある患者に定期的な体位交換をしないなんてありえないでしょう。ですが在宅では家族しか本人の日々のケアはしてあげられません。家族の介護力や理解力に合わせて最適なケアを考えていくことも重要なのだとこの時思いました。

 

結局、基本的な体位は側臥位にして仙骨はベッドに当たらないようにし、奥様にはワセリンを塗るくらいであとは排泄介助のタイミングのみ体位交換をしてもらうことにしました。ケアマネージャーに相談し単位の中で使用できる自動体交マットレスに変更し、わずか10日たらずで褥瘡はほぼ完治しました。

 

 

「医学的にこうするのが正しい」を極めていくのが病院ですが、そのやり方が必ずしも正解ではないのが在宅看護なのだとこの事例から学ばせて頂きました。結局その方は施設の空きが出て入所し、今は週末のみ奥様が面会に行っているそうです。半年ほどの在宅介護でしたが「お父さんにできる限りのことをしてあげられたと思う。施設に入所させることは少し罪悪感もあるけれど、看護さんやケアマネさんがよく頑張ってるって毎回言ってくれたから、お父さんも「頑張ったな」って許してくれるんじゃないかと思う。」と話されていました。

 

医学的には、最新の論文では…新しいことを学び続けるのも専門家として重要な事ですが、この家での最適解はなんだろう?この家族にとってのケアとはなんだろう?そこを常に寄り添っていける看護師でありたいと思っています。

 

 

※繰り返しになりますが、個人情報保護の観点から、エピソードや事例の中に出てくる利用者さんの名前、年齢、病名、家族背景、社会背景はすべて個人が特定されないよう、内容を変えて記載しています。私が感じたこと、看護として大切にしたいことを書いています。