あなたのお家にお邪魔させてください

新米訪問看護師が日々勉強したことを書き残していくブログ

【5軒目】玄関から踏み入れた先は、全てがその人らしさの塊【病棟との違い③】

 

こんにちは、管理人のふくです🌿

 

今日は病棟との違い③として、訪問先の住宅環境について書いていこうと思います。

 

※個人情報保護の観点から、エピソードや事例の中に出てくる利用者さんの名前、年齢、病名、家族背景、社会背景はすべて個人が特定されないよう、内容を変えて記載しています。私が感じたこと、看護として大切にしたいことを書きたいと思います。

 

病棟で働いたことのある看護師さんなら皆さんわかるかと思いますが、入院の際は個室でない限りは一人一人が与えられるスペースはごく限られていますよね。ご自身のブランケットやパジャマを持ってきたり、趣味のものを持ち込むことはできても、基本的なベッド、床頭台、オーバーテーブルといった構造は同じです。

 

ですが、訪問看護は看護の提供する場が個人のお家なので、アパート、マンション、戸建て、高齢者住宅など様々です。玄関から一歩踏み入れた先にはどれ一つとして同じような家は存在しません。

 

とある女性のお家にお邪魔させて頂いた時は壁一面にGLAYのポスターやライブのタオルなどが飾られていました。訪問中ももちろん、GLAYのCDがBGMです。重度の鬱病によりほとんど外に出ることができなくなっていた彼女が、昔は追っかけをして全国各地のライブに出没したのだと言うので驚きでした。またいつか、彼らが解散する前にライブに行けるようになりたい、彼女のささやかな願いでした。

 

とある独居の高齢男性の自宅は、海外のペナントやナンバープレートが部屋の壁という壁を埋め尽くしていました。狭いアパートの一室でしたが、まるで別の国に来たかのような空間が私はとても好きでした。1DKの部屋の中にはご自身でDIYした机が一つと、古い革のトランクが数個あり、彼はキャンプで使うような椅子に腰掛けていました。ベッドはなく、寝袋に温かい毛布を何枚か重ねているだけの床で寝ていたので、大転子には褥瘡もできていましたが「ずっと色んなところを旅して雑魚寝していたから慣れているんだ」といつも同一体位で硬い床で寝てしまうので、褥瘡の治療には大層手こずりました。

 



個人の家に入ると、その人の病気だけでなくもっとその人のパーソナルの部分が、視覚的に、半ば強制的に私達看護師に突きつけられます。有り余るほどの情報から、何を取捨選択しながら自身の看護に活かしていくかは腕の見せ所なのだろうと思いますが、まだまだ初心者の私は圧倒されるばかりで、何気ない雑談に活かすことで精一杯です。

 

また、環境から得られる情報だけでなく、家にいることでその人が家族の中でどのような役割を担っているのかもよくわかります。病院にいるとなかなか感じにくいことですが、家にいると「〜さんは家族に精神的に頼りにされているのだな」とか「家族が厳しくて遠慮してそうだな」とか家族との関係性もとても良くわかるようになります。そうした家族背景が浮き彫りになることで私達も利用者だけでなく家族看護を展開するにあたっての糸口になったりします。

 

学生や新人の頃、情報を取ろうと患者さんに必死にあれこれ質問していた時代を思い出しては、在宅だと一瞬であの苦労が終わってしまうな、と苦笑してしまいます。

時には掃除の行き届いていないお屋敷に入らなくてはならないこともあるけれど、ドアを開けた先にどんな世界が待っているのか、いつも私はワクワクしながらインターフォンを鳴らしています。

 

管理人:ふく

 

北海道のグルメブログも解説しました!→https://konatsu09n01.hatenablog.jp/