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新米訪問看護師が日々勉強したことを書き残していくブログ

【4軒目】「また来てね」と言ってもらえたら、それでいい【私が大切にしたい、看護観】

 

こんばんは、管理人のふくです🌿

 

1回目の投稿の自己紹介でも書きましたが、私が訪問看護を志すきっかけになったのは学生時代の離島実習でした。

 

私が実習にいった島は、病院はありましたが救急対応は難しく、急変時は船やドクターヘリが頼りでした。しかしそれも日中の話で、夜間に急変した場合はヘリも飛ばせません。基本的には状態が悪くなる前に、島での対応が限界を迎える前に、本土での治療をするか否かを話し合い、悪くなりすぎる前に島を離れて入院するしかありません。

 

 

島の病院も入院病棟のベッドが少ないので、診療所の医師の往診や訪問看護師が島民たちの体調の変化がないか様子を見に行っていました。

私は友人とともに看護宿舎に宿泊させて頂き、5日間訪問看護師さんに同行させて頂きました。島民たちは漁に出るため20時には銭湯や店も閉まってしまい島全体がひっそりと静まり返り、真っ暗になるのが印象的でした。

そして朝は3〜4時くらいから活動を始める。訪問の時間も、漁が一段落する午後をめがけて行くなど、地域の生活やルーティンに沿っており、病院とは全く異なった、生活に根ざした看護を展開しなくてはならないのだなと感じました。

 

その頃私は大学病院の殺伐とした忙しさの中実習させて頂くことが多く、島ではゆったりとした時間の中、ナースコールにも邪魔されず利用者さんと話せることがとても嬉しく感じていました。

 

訪問看護師さんと島民も、もう何年もの付き合い。顔を見れば「〜さんどうもね〜ちょっとお茶飲んでから帰りなさいよ」とのんびりお茶を飲む関係性。60分訪問のうち、バイタルサインを測ったり内服の確認をしたのは正味15分くらいだったでしょうか。その後は孫の〜くんがやんちゃで大変、ご主人が冷え性で厚手の靴下を編んでやった、などの世間話がほとんどでした。

そんなのんびりとした会話の後、訪問車に乗り込むと同行して指導して下さった看護師さんに「どう?訪問看護って、意外と何もやることないように見えるでしょ?」と笑って聞かれたのです。私は「病院の実習とは確かに違いますね」と答えると、その看護師さんは続けてこう話されました。

 

 

「そうなの。全然忙しくないし、やることもあんまりない。だけどね、こうした何気ない会話を何年も何年も続けてきたからこそ、わかる変化もあるんだ」と。「例えばね、いつも編み物をしている奥さんが最近しなくなったら体調が悪いのかな?視力に問題があるのかな?とか、ご主人足が冷えるって言っていたけど、糖尿病もあるし足病変の始まりかな?とかね。病院とは違って、その一時期を切り取った中でのアセスメントとはまた違う、日々関わってきたからこそできるアセスメントもある。それが訪問看護の良さだと思うの」と。

 

また、「だけどこの日々関わるってことが実は難しい。基本的に誰もが他人が家に入るなんて本当はしてほしくない。もう来るなと言われたら、私達は関わることすらできなくなってしまう。だからね、訪問看護はまた来てねと言ってもらえたら、それでいいと思う。そうして少しずつ信頼関係を作っていって初めて、治療や内服を受け入れてくれたり、一緒に病気と付き合っていくことができると思うんだ」と話していました。

 

わたしはこの時の看護師さんの言葉を、自分が訪問看護師になった今もずっと忘れていません。在宅では私達はお客さんで、相手の生活の場にお邪魔させて頂く身。いくら専門知識があるからといっても、もう来るなと言われたらそんな知識も技術も何の役にも立たなくなる。

玄関先で「また来てね」そう言われた日は「これでまた、利用者さんに関われる期間が延びたぞ!」とほっと胸を撫で下ろすのです。

 

管理人:ふく